1.会社員の刑事事件について
会社員が何らかの罪を犯し、逮捕されたり捜査を受けたりした場合、刑事手続の流れや解雇・実名報道などが大きな関心事となるでしょう。
このページでは、会社員の刑事事件について、刑事手続の流れと解雇・実名報道、そして身柄解放に向けた弁護人の活動をご説明いたします。
2.刑事事件の手続の流れ
逮捕された場合には、警察官は微罪処分として釈放する場合を除いて、48時間以内に検察官に事件を引き継ぐ検察官送致(送検)を行います。
そして、事件の送致を受けた検察官は必要に応じ24時間以内に裁判所に勾留請求をし、勾留が許可されれば10日間身柄が拘束されることとなります。
さらに、必要に応じ最長10日間の勾留延長が行われ、起訴・不起訴が決まるまでに最長で合計23日間の身体拘束が続きます。
一方で、軽微な犯罪事実の場合などには、逮捕・勾留されずに手続が進むことがあります。
このような事案を在宅事件と言いますが、在宅事件では身柄拘束がされず、捜査・起訴の期限も原則としてありません。
3.逮捕・勾留と解雇・実名報道
(1)解雇
逮捕・勾留されたとしても、勤務先の会社に知られることなく釈放された場合には、直ちに解雇されることにはなりません。
警察は、業務に関係した事件でなければ、会社に連絡することはないのが通常です。
しかし、身体拘束が長期化すれば、会社に事件のことを知られるリスクが高まりますし、長期の欠勤が解雇事由となることがあります。
そのため、早期の釈放を目指すことが重要です。
また、会社に事件のことを知られた場合、解雇されるかどうかは会社の就業規則によります。
就業規則の解雇事由が「有罪の判決を受けた場合」などとなっていれば、逮捕されただけでは直ちには解雇されることはないでしょう。
一方で、就業規則の解雇事由の定め方によっては、本人が容疑を認めている場合には逮捕・勾留された時点で懲戒解雇となることもあります。
(2)実名報道
逮捕された場合に「実名報道されてしまうのか?」というご質問もよくいただきます。
実名報道をされてしまうと、会社に事件のことを知られ、仕事を失うリスクが高まります。
この点、実名報道に関する明確な基準はなく、報道機関の自主判断に任されています。
実名報道が行われるかどうかは事案によりますが、青森県のような地方都市の場合、中小企業の会社員による比較的軽微な犯罪であっても、地元の新聞には掲載されてしまうことが多いように見受けられます。
重大な犯罪でなければテレビで取り上げられることは少ないのですが、地元の新聞に掲載されることにより知れ渡ってしまうことが多いのが実情です。
4.弁護人の活動
刑事事件において活動する弁護士のことを、弁護人と言います。
会社員の刑事事件の場合に弁護人が行うサポートについて、以下でご説明いたします。
(1)接見・連絡・打ち合わせを行う
逮捕から勾留までの3日間は、被疑者と接見できるのは弁護人のみです。
勾留されたあとも、接見禁止とされ家族ですら面会が認められないこともありますが、弁護人であれば接見が制限されません。
弁護人は、被疑者と家族との連絡を仲介することが可能であり、また弁護方針に関し被疑者・家族と打ち合わせを行います。
(2)早期の身柄解放を目指す
会社員の刑事事件では、身体拘束が長期化することによる不利益が大きいため、早期の身柄解放を目指すことが重要です。
弁護人としては、検察官に対し勾留請求をしないように働きかけたり、勾留決定が出された場合に準抗告(不服申立て)を行ったりするなどの弁護活動を展開します。
また、被害者との示談が成立すれば身柄解放・不起訴処分となる可能性が高まるため、弁護人としては早期の示談成立を目指し被害者との示談交渉に臨みます。
(3)被害者との示談交渉を行う
被害者との示談は、身柄解放・不起訴処分を得るうえで非常に重要です。
被害者としては、加害者に対して連絡先等を教えたくないものの、弁護人であれば示談交渉のやり取りをしてもよい、というケースが多いです。
弁護人としては、捜査機関を通じて被害者と連絡し、早期の示談成立に向けた示談交渉を進めることとなります。
(4)不起訴処分を目指す
起訴されてしまうと、99%以上が有罪判決となり、前科が付くこととなります。
一方で、不起訴処分となれば、前科が付くことはありません。
会社員の場合、就業規則の内容いかんにより、不起訴処分となったとしても、罪を認めていれば、解雇されてしまうこともあります。
しかし、有罪判決を受けなければ解雇を免れることもありますので、不起訴処分を目指すことが大切です。
弁護人としては、被害者との示談を成立させることや、検察官に対し不起訴処分が相当であるとの働きかけを行うことなどの対応が考えられます。
(5)起訴された場合には減刑・執行猶予を目指す
起訴された場合には、減刑・執行猶予を目指すこととなります。
弁護人としては、量刑において被告人に有利な事情を主張・立証し、減刑・執行猶予を求める弁論を行います。
また、起訴された時点で勾留されている場合には、弁護人としては、必要に応じ保釈を請求し、保釈を却下する決定に対しては準抗告・抗告(不服申立て)を行うことにより、身柄の解放を目指します。
5.弁護士にご相談ください
当事務所では、刑事事件・刑事弁護に関するご相談・ご依頼を承っております。
会社員の刑事事件に関する対応経験・解決実績も豊富にございますので、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。
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