1 詐欺とは
刑法上の詐欺とは、人を欺いて財物を交付させる行為(刑法246条1項)や、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる行為(刑法246条2項)をいいます。
人を欺くとは、相手が真実を知っていれば財物の交付等を行わないような重要な事実について、相手を誤信させ得る行為を行うことを指します。
これにより、相手から現実に財物の交付を受けた場合や、権利やサービスなどの利益を受けた場合などに、詐欺罪が成立します。
なお、実際に財物の交付や利益を受けるに至らない場合でも、詐欺未遂罪が成立する可能性があります。
詐欺の具体的な態様は多種多様であり、
・料金を支払う気がないのに通常の客を装って商品を注文する
・親族や金融機関などと身分を偽って金銭を振り込ませる
・架空の投資や結婚を持ちかけて金銭を振り込ませる
・他人名義のクレジットカードを本人を装って使用し商品を購入する
など、人を欺くという要素のある様々な行為が詐欺に該当します。
2 詐欺の刑罰
詐欺罪の法定刑は10年以下の有期懲役です。
有期懲役の下限は1か月であり、したがって、詐欺を行った場合1か月から10年の懲役刑が科される可能性があります。
3 詐欺の刑事手続の流れ
詐欺事件が発覚することで、警察・検察による捜査が開始します。
その際、被疑者に罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれなどがある事案であれば、被疑者を身体拘束したうえで捜査を進めることになります。
ここにいう身体拘束とは、最長72時間の逮捕及びこれに引き続く最長20日間の勾留のことをいいます。
巧妙に行われる詐欺については、罪証隠滅の余地があるものと考えられ、逮捕・勾留のうえで捜査を進める可能性が高いといえるでしょう。
捜査が完了した時点で、検察官において、起訴または不起訴の処分を決定することになります(詐欺罪の法定刑は懲役刑のみであるため、略式起訴は選択できません。)。
検察官が起訴を行った場合、事件が訴訟において審理されることになります。
4 詐欺の弁護方針
前提となるのが、詐欺に該当するとされている事実関係に間違いがないかという点です。
事実関係に間違っている点があれば、徹底的に事実関係を争い、不起訴や無罪の獲得を目標とすることになります。
他方で事実関係に間違いがない場合、犯罪に該当することを前提に、不起訴や、起訴された場合の執行猶予付き判決などの軽い刑を目標とした弁護方針を立てることになります。
具体的には、被害者との示談や被害弁償が最も重要となります。
また、いずれの場合でも逮捕・勾留されている場合であれば、これと並行して身体拘束からの解放に向けた活動として、各段階における準抗告や保釈といった手続きを検討することになります。
さらに、特殊詐欺などの組織犯罪の場合であれば、捜査に協力する代わりに不起訴などの軽い処分を約束される制度である、協議・合意制度を活用することも考えられます。
5 弁護士にご相談ください
詐欺罪は法定刑が重く、逮捕・勾留される可能性も高い犯罪類型であることから、早期に専門家にご相談いただき、適切な弁護方針のもと対応していく必要が高いといえるでしょう。
詐欺事件の刑事弁護についてお悩みでしたら、まずは当事務所までお気軽にご相談いただければと存じます。