1 児童ポルノとは?
児童ポルノに関しては、児ポ法(正式名称「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」)により、規制されています。
ここでいう「児童」とは、18歳に満たない者をいい(児ポ法2条1項)、男女の別を問いません。
児童は実在する必要があり、実在しない架空の児童の姿態を描写したものは「児童ポルノ」には該当しません。
そして、「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体(CD、DVDなど)その他の物であって、以下のいずれかに該当する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいいます(児ポ法2条3項)。
・児童が性交・性交類似行為をしている姿(1号)
・他人が児童の性器等を触る行為、または、児童が他人の性器等を触る行為が描写されているもので、性欲を興奮・刺激するもの(2号)
・衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出・強調されているもので、性欲を興奮・刺激するもの(3号)
3号に関し、通常の水着であれば、児童ポルノに該当しないとされています。
一方で、いわゆるマイクロビキニなどを着用し、陰部に食い込ませていたり、乳首が辛うじて隠れたりしているようなものは、3号ポルノに該当すると判断されることもあります。
2 児童ポルノ事件の行為態様と罰則
児童ポルノ事件の行為態様と罰則については、児ポ法7条各項に規定されています。
(1)自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持(1項)
自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持し、又は児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
所持・保管開始の時点において、自己の意思に基づいて所持・保管するに至ったことが必要です。
メールで児童ポルノを送り付けられた場合や、パソコンがウイルスに感染し勝手に児童ポルノをダウンロードした場合には、この罪は成立しません。
(2)特定かつ少数の者への児童ポルノ提供罪(2項)
児童ポルノを提供した者、電気通信回線を通じて児童ポルノを資格により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
提供の相手方が特定かつ少数の者であることが要件となっています。
不特定又は多数の者に対する提供であれば、より重い罪である児ポ法7条6項が適用されます。
(3)提供目的所持・保管行為等罪(3項)
提供等の目的で児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者、提供等の目的で電磁的記録を保管した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
提供の相手方が特定かつ少数の者であることが要件となっています。
不特定又は多数の者に対する提供であれば、より重い罪である児ポ法7条7項が適用されます。
(4)「姿態をとらせ」製造罪(4項)
児童に児童ポルノに係る姿態をとらせた上、これを写真等に描写し、よって当該児童に係る児童ポルノを製造した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
このような行為は当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、流通の危険性を作り出す点でも非難に値すると言われています。
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至れば足り、強制によることは要しません。
また、当該児童が当該製造について同意していても、罪の成立に影響はありません。
(5)盗撮による児童ポルノ製造罪(5項)
ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
盗撮という悪質な対応による児童ポルノ製造行為を処罰する規定です。
(6)不特定又は多数の者に対する児童ポルノ提供罪(6項)
特定かつ少数の者への児童ポルノ提供罪(7条2項)が、不特定又は多数の者に対して行われた場合の加重規定となります。
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処され、又は併科されます。
併科とは、同時に懲役刑と罰金刑が科されることです。
不特定又は多数の者を相手方とする目的(反復の意思)を有していれば、1人に対する1回の提供であっても、この罪は成立すると考えられています。
(7)不特定又は多数の者に対する提供目的所持・保管行為等罪(7項)
提供目的所持・保管行為等罪(7条3項)が、不特定又は多数の者に対して行われた場合の加重規定となります。
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処され、又は併科されます。
(8)外国での児童ポルノ輸出入罪(8項)
不特定又は多数の者に対する児童ポルノ提供の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民が処罰の対象となります。
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処され、又は併科されます。
7条3項の輸出入罪とあわせて、日本国民については、国内外を問わず児童ポルノの輸出入を処罰の対象とするものです。
3 児童ポルノ事件の刑事手続の流れ
児ポ法違反で、逮捕された場合には、逮捕から48時間以内に事件が検察庁へ送られます。
検察官は、被疑者から弁解を聞き、引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合には、事件を受け取ってから24時間以内に裁判官に勾留請求をします。
裁判官は、勾留する必要があると判断した場合には、勾留決定をします。
勾留期間は最大10日間ですが、それに追加して最大10日間勾留期間の延長がされることがあります。
そのため、捜査段階では、逮捕から勾留までの最大72時間に勾留期間の最大20日間を加えた合計最大23日間、身柄が拘束される可能性があります。
検察官は、この期間内に捜査をし、起訴(略式起訴を含む)するかどうかの判断をすることになります。
児童ポルノ事件においては、特に製造罪は逮捕されやすいといわれています。
製造行為は、児童に働きかけて新たに児童ポルノを作成するものであって、容易に証拠隠滅が行われたり、当該児童が危害を加えられたりする可能性が高いと考えられるからです。
4 児童ポルノ事件の刑事弁護のポイント
(1)罪を認めている場合
被害児童が特定されているのであれば、被害児童との示談が重要となります。
示談をすることで、逮捕前であれば在宅捜査とされたり、起訴・不起訴の処分前であれば不起訴処分とされたり、起訴後であっても執行猶予の有無・量刑判断に有利に働きます。
もっとも、被害児童は示談時点で18歳に満たないことが多いため、示談は被害児童の保護者との間で交渉をすすめることがほとんどです。
愛するわが子が性被害にあったということで、感情的に過剰な主張・要求を持ちかける保護者も少なくありません。
そのような場合でも、弁護士であれば、冷静に解決に向けた交渉をすることが可能です。
また、示談が成立しない場合であっても、弁済供託や贖罪寄付を行うことにより、謝罪・反省の気持ちを示すことも必要でしょう。
仮に示談が成立したとしても、示談さえすればよいというわけではありません。
児ポ法には、児童に対する性的搾取・性的虐待を防止する側面もあります。
そこで、犯罪行為を行った動機・原因などを振り返り、二度と同様の行為を繰り返さないために、具体的な方法を検討することも必要です。
例としては、精神科や心療内科を受診し、認知行動療法により、性に対する認知のゆがみを改善することがあげられます。
(2)罪を認めていない場合
児ポ法上の罪の成立を争う場合には、罪が成立しないことを裏付ける主張や、その主張を裏付ける証拠の収集が必要となります。
なお、児童ポルノ事件では、「相手が18歳以上であると思っていた。」と主張しても、直ちに捜査機関がその主張を受け入れることは少ないのが現状です。
捜査機関としては、どこかのタイミングで「18歳未満かもしれない。」と気付くことができなかったか、厳しく追及することがあります。
そこで、弁護士を通じて、児童の年齢を調査して確認する義務を尽くしたにもかかわらず、児童であることを知りえなかったことを適切に主張・立証し、処罰を免れる必要が出てきます。
5 児童ポルノ事件を弁護士に相談・依頼するメリット
(1)被害児童と示談することができる
罪を認めている場合、被害児童の被害回復を図って、被害者と示談することが重要です。
もっとも、被害児童側が、加害者本人に連絡先を教えることを拒み、示談交渉ができない場合があります。
その場合、弁護士であれば、弁護士限りで情報を提供するように求め、弁護士が加害者側の窓口となることで、示談交渉が可能となり、示談の成立が実現することも多いです。
仮に加害者本人が示談交渉をするとしても、示談交渉の場のひとことで、余計に被害感情を掻き立てたり、被害児童側から感情任せの法外な請求を受けたりすることも少なくありません。
弁護士にご相談いただければ、経緯や事情等を考慮し、適正な示談額・適正な条件での示談案を考えることができます。
また、ご依頼いただければ、弁護士が窓口となって示談交渉を行いますので、精神的・時間的な負担が軽減されます。
(2)自首・出頭に同行することができる
ネット社会と言われる現代では、警察によるサイバーパトロールも強化され、ネット上での児童ポルノ事件も容易に検挙されています。
また、家宅捜索を受けることで、自らに嫌疑の目が向けられていることを感じることもあります。
そのような場合には、弁護士と事前に打ち合わせをし、警察署に自首・出頭することも可能です。
そこでは、自らの主張を、弁護士を通して整理した形で警察に報告することが可能となります。
(3)捜査機関・裁判官に適切に主張を伝えることができる
罪を認める場合であっても、罪を認めない場合であっても、自らの主張を適切に捜査機関(警察・検察)や裁判官に伝える必要があります。
捜査機関による厳しい対応での取調べ、時には違法と評価されるほどの悪質な取調べが存在することは、近年も報告されています。
そのような中でも、しっかりと自らの主張を伝えていく必要があります。
また、事案によっては、黙秘権を行使したり、供述調書への署名・押印を断わったりことが賢明なこともあります。
弁護士であれば、依頼者にとってどのような対応が望ましいかを判断したうえで、アドバイスすることが可能です。
起訴された場合には、裁判官に対しても適切な主張をしていく必要があります。
6 弁護士にご相談ください
児童ポルノは、近年、性被害にあう児童が増えたことにより、国内外の議論が活性化したことで、厳罰化や処罰範囲の拡大が行われた分野です。
また、近年では、SNSの普及により、一度インターネット上に公開されると、完全に削除することが難しいこともあり、被害者の処罰感情も強いことが珍しくありません。
これは児ポ法違反の行為なのか?
違法であるならば、今度私はどうなるのか・どうすべきなのか?
被害児童と示談したいと考えているが、どうしたらよいか?
このような例に限らず、児童ポルノ事件でお困りの方は、ぜひ一度当事務所の弁護士にご相談ください。
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