1 覚せい剤に関する犯罪と罰則
覚せい剤事件に関する法律として、「覚醒剤取締法」があります。
そのなかで禁止されており、実務上も問題となることが多い、①所持、②使用、③譲渡・譲受、④輸出・輸入、⑤製造の各行為について、以下で解説します。
(1)覚せい剤所持罪
覚せい剤製造業者などの一定の資格を有する者が所持する場合を除き、何人も、覚せい剤を所持してはならないとされています(14条)。
これに違反して、みだりに覚せい剤を所持した場合の法定刑は、10年以下の懲役となります(41条の2第1項)。
また、営利目的の場合には、法定刑は、1年以上の懲役となります。
なお、情状により、1年以上の懲役及び500万円以下の罰金に処せられます(41条の2第2項)。
所持の態様に、制限はありません。
すなわち、自ら直接覚せい剤を実力支配下に置く直接所持でも、直接所持をしている他人を通じて間接的に覚せい剤を実力支配下に置く間接所持でも、本罪は成立します。
また、単独所持でも、複数人で共同して所持する共同所持でも、本罪は成立します。
(2)覚せい剤使用罪
覚せい剤製造業者が製造のために使用する場合などを除き、何人も、覚せい剤を使用してはならないとされています(19条)。
これに違反して、覚せい剤を使用した場合の法定刑は、10年以下の懲役となります(41条の3第1項1号)。
「使用」とは、覚せい剤をその用法に従って用いる一切の行為をいい、対象・方法・動機を問いません。
自己の身体に用いる自己使用の場合も、他人の身体に用いる他人使用の場合も、本罪の対象です。
使用の方法として、注射、飲用、塗布などありますが、いかなる方法であっても本罪の対象です。
(3)覚せい剤譲渡罪・覚せい剤譲受罪
覚せい剤の譲渡、譲受も、法定の例外事由に該当しない限り、違法な行為とされています(17条)。
これに違反して、覚せい剤をみだりに、譲り渡し、又は譲り受けた場合の法定刑は、10年以下の懲役となります(41条の2第1項)。
また、営利目的の場合には、法定刑は、1年以上の懲役となります。なお、情状により、1年以上の懲役及び500万円以下の罰金に処せられます(41条の2第2項)。
(4)覚せい剤輸出罪・覚せい剤輸入罪
何人も、覚せい剤を輸入し、又は輸出してはならないとされています(13条)。
これに違反して、覚せい剤を、みだりに、輸出入した者は、1年以上の懲役となります(41条1項)。
また、営利目的の場合には、法定刑は、無期または3年以上の懲役となります。なお、情状により、無期または3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処せられます(41条2項)。
輸出入が禁止されているのは、我が国や輸出先の国での覚せい剤濫用の危険性が生じ、保健衛生上の危害が生じるからとされています。
輸出入行為は、譲渡・譲受行為と比した場合に、今まで存在しなかった国や地域に覚せい剤を新たに出現させうる行為であって、それだけ保健衛生上与える影響が大きいことから、他の行為に比べて重い法定刑が用意されています。
(5)覚せい剤製造罪
一定の目的のために製造する場合のほかに、何人も、覚せい剤を製造してはならないとされています(15条)。
これに違反して、覚せい剤を、みだりに、輸出入した者は、1年以上の懲役となります(41条1項)。
また、営利目的の場合には、法定刑は、無期または3年以上の懲役となります。なお、情状により、無期または3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処せられます(41条2項)。
輸出入行為と同様に、新たに社会内に覚せい剤を出現させることで、保健衛生上の危害が生じる可能性を新たに作出していることから、厳罰が予定されています。
(6)営利の目的について
営利の目的とは、犯人が自ら財産上の利益を得、または第三者に得させることを動機・目的とする場合をいいます。
営利の目的があれば、一般に犯罪行為が反復・累行されることにより、薬物濫用が助長されることにより、保健衛生上与える影響が大きくなることから、違法性の程度が高まります。
そこで、営利目的がある場合には、法定刑が重くなり、実際に科される刑も重くなります。
営利の目的は、覚せい剤の量や、電子秤の所持といった事実から認められることがあります。
2 覚せい剤事件の刑事手続の流れ
覚せい剤事件で逮捕された場合には、逮捕から48時間以内に事件が検察庁へ送られます。
検察官は、被疑者から弁解を聞き、引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合には、事件を受け取ってから24時間以内に裁判官に勾留請求をします。
裁判官は、検察官からの勾留請求を受け、引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合には、勾留決定をします。
勾留期間は最大10日間ですが、それに追加して最大10日間勾留期間の延長がされることがあります。
そのため、捜査段階では、逮捕から勾留までの最大72時間に勾留期間の最大20日間を加えた合計最大23日間、身柄が拘束される可能性があります。
検察官は、この期間内に捜査をし、起訴するかどうかの判断をします。
覚せい剤事件は、比較的逮捕されやすいといわれています。
組織的な犯行であったり、反社会的組織が絡んでいたりするほか、証拠隠滅が容易に実現しやすいことが理由としてあげられます。
3 覚せい剤事件と執行猶予
覚せい剤事件は、初犯であっても起訴される可能性が相当高いです。
現在の実務では、捜査段階で違法な捜査をした場合などの例外的な場合を除き、ほぼ起訴されている印象です。
もっとも、起訴されたとしても、前科前歴がない自己使用・自己使用目的所持の場合には、たいてい執行猶予判決が言い渡されています。
ただ、覚せい剤の量、背景組織、被告人の反省度合いによっては、実刑が言い渡される可能性もあります。
「執行猶予になるならば、一度だけ…」と甘い気持ちで覚せい剤に手を出すことは、絶対におやめください。
自己使用・自己使用目的所持であっても、前科前歴があれば、実刑となる可能性は格段と上がります。
また、営利目的所持や輸出入・製造行為は、覚せい剤を社会に拡散させた点で重い処罰が予定されており、実刑となる可能性が高いです。
4 覚せい剤事件と保釈
覚せい剤事件での保釈は、身元保証人がおり、帰住先が確保されている場合には、比較的認められやすい傾向にあります。
保釈が認められた場合には、早期に依存対策のために診療・通院をすることで、二度と覚せい剤には手を出さないという態度を示すことができます。
一方で、保釈後すぐに再度覚せい剤に手を染める事案も少なくないようです。
被告人自身も強い信念を持つ必要がありますが、身元保証人が果たすべき役割も大きくなるでしょう。
5 覚せい剤事件の刑事弁護
(1)罪を認めている場合
罪を認めている場合には、二度と覚せい剤を含めた薬物事犯を起こさないように誓うことが重要です。
そのためには、具体的な案を考え、それを実行していく必要があります。
例として、
・覚せい剤の入手ルートを、捜査機関や裁判官に包み隠さず伝える。
・関係者との連絡を一切絶つ。
・医療機関や依存症回復支援施設などで治療を受ける。
・福祉施設に反省の意を示すために贖罪寄付を行う。
といったことがあげられます。
自分ひとりでは難しいということであれば、弁護人、家族、関係機関に協力を求めていくことが肝要です。
(2)罪を認めていない場合
・私は覚せい剤を使用していない。寝ている間に注射されたようだ。
・受け取った物が覚せい剤だとは思わなかった。
というように、罪の成立自体を争う場合が考えられます。
また、覚せい剤を使用した事実は認めつつも、
・警察官にがんじがらめにされながら、尿を採取された。
・任意同行に応じたが、取調官から、「罪を認めなければ、今日は返さない。」と言われた。
というように、捜査機関による捜査が適正に行われていないため、犯罪成立に不可欠な証拠を裁判で使うべきではないと主張し、無罪を求めることも考えられます。
いずれの場合にも、弁護人と綿密な接見・打合せをし、捜査機関や裁判官に納得してもらえるための準備をする必要があります。
6 覚せい剤事件で弁護士に依頼するメリット
罪を認める場合には、再犯を防止するために、適切な再犯防止策を考え、それを適切に実行していく必要があります。
およそ実現不可能な案を考えても意味がなく、逆にストレスとなり、覚せい剤に再び手を出すという悪循環も生みかねません。
弁護士であれば、更生・社会復帰のために、家族や関係機関とも協力のうえ、被疑者・被告人にとって、より意味のある再犯防止策を一緒に考えていくことが可能です。
罪を認めない場合には、適切に裁判官に真実を主張したり、即時に捜査機関に抗議をしたりすることが必要になります。
また、覚せい剤事件では、覚せい剤の体内循環など医学的なメカニズムの理解や鑑定結果の吟味など、専門的な知識が求められることもあります。
日頃覚せい剤を目にすることがないため、一般の方には想像することすら難しいものですが、弁護士であれば、専門書籍を読み解いたり、医療機関と相談したりすることで、適切な主張が可能となります。
7 弁護士にご相談ください
覚せい剤は強い依存性があるため、濫用・再犯の可能性が高い類型とされています。
幻覚・妄想により、使用者本人のみならず、周囲の人や、社会全体に対しても、取り返しのつかない被害を生じさせうる危険な類型です。
覚せい剤事件でお困りの方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。
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