1 強要罪の成立要件
強要罪は、刑法223条によって犯罪として規制されています。
その成立要件は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫し又は暴行を用いて」、「人に義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害すること」とされています。
「脅迫」とは、生命や身体、自由、財産又は名誉に対して危害を加える旨を告知することであり、人が畏怖するに足りる告知内容・方法である必要があります。
例えば、お前の家に火をつける、お前を殺してやると言って脅すことがこれに該当します。
「暴行」とは、身体に対する不法な有形力の行使のことをいいます。
端的に人を殴ったり蹴ったりすることがこれに該当します。
「義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害すること」とは、従業員に土下座をさせたり(義務のないことを行わせ)、告訴を止めさせたりすること(権利の行使を妨害する)等がこれに該当します。
脅迫や暴行を用いてこれらの義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりすることによって強要罪が成立することになります。
脅迫の対象には親族も含まれていますので、例えば、被害者本人の親族に対し脅迫を行い、被害者に義務のないことを行わせ、権利の行使を妨害することによっても強要罪が成立することになります。
また、強要罪は未遂も処罰されることになりますので、義務のないことを行わせることや権利の行使を妨害することを認識しつつ、脅迫や暴行を加えたものの、相手方が要求に応じなかった場合には、強要未遂罪が成立することになります。
2 強要罪の罰則
強要罪に該当する場合、3年以下の懲役刑に処せられることになります。
脅迫罪では2年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑に処せられるのと比較して、懲役刑の重さ及び罰金刑の有無という点において、強要罪は重く処罰されることになります。
また、脅迫罪と異なり、強要罪では未遂も処罰されます。
未遂は、原則的には刑に影響するものではありませんが、裁判所の判断によって任意的に減軽され、ある一定の要件を満たす場合には必ず減軽あるいは刑が免除されることになります。
3 強要罪の刑事手続の流れ
強要罪の刑事手続きは次のような流れとなります。
まず警察による捜査が行われることになります。
この場合、逃亡や罪証隠滅の恐れがあると判断される場合には、逮捕・勾留されることがあります。
強要罪は被害者がいる犯罪のため、被害者と連絡を取って自身に有利に被害者の供述を変更させる恐れがある場合や、通話履歴やメールの履歴、その他暴行に用いた凶器といった物証が残っておりそれらが隠滅される恐れがある場合には、逮捕・勾留される可能性があります。
逮捕・勾留は、最長で23日間継続することがあります。
逮捕・勾留後、検察官によって起訴された場合には、公判手続きによって有罪・無罪が決められ、有罪の場合には刑の重さが決められることになります。
強要罪には罰金刑が規定されていませんので、簡易な手続きで罰金刑を科す略式手続きが行われることはありません。
もっとも、検察官が起訴の判断を行う前に被害者と示談が成立している場合には、検察官がそもそも不起訴処分とすることがあり、この場合には公判手続きは行われないことになります。
4 強要罪における弁護活動
前述したように、事実関係に間違いがない場合には、強要罪は被害者がいる犯罪となりますので、被害者と示談を成立させることが主な弁護活動となります。
弁護活動の基本的な方針としては、示談契約を成立させて被害者の損害を償うことにより、刑罰の重さを決める上で有利な事情として考慮してもらうことになります。
検察官が起訴の判断を行う前には示談成立によって不起訴処分を目指し、仮に起訴された場合であっても、示談を成立させることにより執行猶予判決を目指すことになります。
もっとも、前述のように強要罪には罰金刑が規定されていないことから、起訴された場合には必ず正式裁判となり、略式命令(書面のみの審理によって即日罰金の判決が出される簡易な手続きのこと)による早期解決を期待することはできません。
そのため、まずは起訴されないようにすることが第1の目標となります。
一方で、事実関係に争いがある場合には、嫌疑不十分によって不起訴処分になることもありますが、起訴された場合には、公判手続きにおいて事実関係を争い強要罪が成立しないことを裁判所に認めてもらうよう活動していくことになります。
5 弁護士にご相談ください
強要罪においては、示談交渉を中心とした弁護活動によって、結果が大きく変わる可能性があります。
迅速な対応が必要なため、できる限り早期に弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
強要罪の刑事弁護についてお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所までご相談いただければと存じます。
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