1 風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律(風営法)について

風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律(風営法)は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的とします。
具体的な規制内容は、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間や営業区域等の制限、年少者をこれらの営業所に立ち入らせないよう規制することで、風俗営業の健全化とその業務の適正化の促進を図っています。

2 風営法違反になる行為と罰則

風営法違反になる行為と罰則に関する規律は、複雑かつ多様で一般の方が正確に理解することは困難を伴いますが、次のように整理することができます。

(1)許可制と届出制・それに対する罰則

【1】許可制と届出制の区別と趣旨
風営法においては、「風俗営業」と「特定遊興飲食店営業」について許可制、「性風俗関連特殊営業」と「深夜酒類提供飲食店営業」について届出制が採用されており、許可や届出がなくこれらを行うと罰則の対象となります。
許可と届出は行政法上の概念であって、許可は、市民に対し一般的にある行為を禁止し、行政が特定の要件を満たしていると判断する場合にその禁止を解除するという性質のものであり、身近なものとしては運転免許があります。
「風俗営業」や「特定遊興飲食店営業」を市民の自由に任せておくと無制限な営業によって青少年の健全な成長に悪影響を与える等、弊害が想定されるので、一般的な禁止に対し例外的に禁止を解除する許可制が採用されています。
一方で、届出は、市民が一般的にある行動を行う自由を有しており、ただしその行動を行うためには行政に事前に届出を行わなければならないとする制度です。
「性風俗関連特殊営業」と「深夜酒類提供飲食店営業」においては届出制が採用されており、前者の「性風俗関連特殊営業」については行政が許可により性風俗営業を認める法制度は社会一般的な立場から妥当性に疑問が残ること、後者の「深夜酒類提供飲食店営業」については許可制により厳格に規制を行うほどの弊害は想定されないことから、より緩やかな届出制が採用されております。

【2】無許可と無届出に対する罰則
許可を受けずに「風俗営業」や「特定遊興飲食店営業」を行った者は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金となります(風営法49条1号)。
一方で、届出を行うことなく「性風俗関連特殊営業」を行った者は、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金の対象となります(風営法52条4号)。
また、届出を行うことなく「深夜酒類提供飲食店営業」を行った者は、50万円以下の罰金の対象となります(風営法54条6号)。

以下では、規制の対象となる具体的な業態についてご説明いたします。

(2)風俗営業

「風俗営業」は、「接待飲食等営業」と「遊技場営業」に分類されます。
風営法2条1項の1号から5号のうち何号に規定されているかに応じて、それぞれの営業形態が「〇号営業」と呼ばれています。

【1】接待飲食等営業
接待飲食等営業は、次の3つに分類されています。
1号営業は料理店や社交飲食店と言われるもので、客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業であり、具体的には、キャバクラやホストクラブ等がこれに当たります。
2号営業は低照度飲食店と言われるもので、設備を設けて客に飲食をさせる営業で、営業所内の照度を十ルクス以下として営むものであり、具体的には、暗めのバーや居酒屋、クラブ等がこれに当たります。
3号営業は区画席飲食店と言われるもので、設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むものであり、具体的には、ネットカフェや個室居酒屋等がこれに当たります。

【2】遊技場営業
遊技場経営は、次の2つに分類され、風営法2条1項の4号と5号に規定されていることから、それぞれ4号営業と5号営業と呼ばれています。
4号営業は、麻雀やパチンコなどの客に射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業であり、具体的には、雀荘やパチンコ店がこれに当たります。
5号営業は、スロットマシンやテレビゲーム等、国家公安委員会が定めた本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊戯に用いることができると判断した遊戯設備を用いた営業のこと(旅館業その他の営業の用に供され又は随伴する施設等は除く)であり、ゲームセンターがこれに当たります。

(3)性風俗関連特殊営業

性風俗関連特殊営業は、いわゆる性風俗店やラブホテル、アダルトショップ等がこれに当たることはもちろんのこと、インターネットを利用したアダルト画像送信営業や、テレホンクラブ、ツーショットダイヤルもこれに当たります。
このうち、規制の中心となるのは店舗型性風俗特殊営業、つまりソープランドといった実店舗を持つ性風俗店です。
これら営業を行うために許可は必要ありませんが、届出制が採用されているため、届出を事前に行う必要があります。
性風俗関連特殊営業は、次のように分類されます。

【1】店舗型性風俗特殊営業
店舗型性風俗特殊営業は、風営法2条6項の1号から6号により定義されています。
1号営業は、浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業のことであり、ソープランドがこれに当たります。
2号営業は、個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で1号営業を除くものであり、ファッションヘルスがこれに当たります。
3号営業は、専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗または少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場として政令で定めるものを経営する営業のことであり、個室ビデオ店やストリップ劇場がこれに当たります。
4号営業は、専ら異性を同伴する客の宿泊の用に供する政令で定める施設を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業のことであり、ラブホテルやレンタルルームがこれに当たります。
5号営業は、店舗を設けて、もっぱら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、または貸し付ける営業のことであり、アダルトショップがこれに当たります。
6号営業は、1~5号営業の他、店舗を設けて営む性風俗に関する営業で、善良の風俗、正常な風俗環境または少年の健全な育成に与える影響が著しい営業として政令で定めるものであり、出会い系喫茶等がこれに当たります。

【2】無店舗型性風俗特殊営業
無店舗型性風俗特殊営業は、風営法2条7項の1号および2号により定義されています。
1号営業は、人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むものであり、デリバリーヘルスがこれに当たります。
2号営業は、電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら、政令で定める物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むものであり、アダルトビデオ通信販売がこれに当たります。

【3】映像送信型性風俗特殊営業
映像送信型性風俗特殊営業は、風営法2条8項により定義されています。
専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の影像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達することにより営むものであり、アダルト画像通信販売がこれに当たります。

【4】店舗型電話異性紹介営業
店舗型電話異性紹介営業は、風営法2条9項により定義されています。
店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて当該店舗内に立ち入らせた他の一方の者に取り次ぐことによって営むものであり、入店型のテレホンクラブがこれに当たります。

【5】無店舗型電話異性紹介営業
無店舗型電話異性紹介営業は、風営法2条10項により定義されています。
専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによって営むものであり、ツーショットダイヤルや伝言ダイヤルがこれに当たります。

(4)深夜酒類提供飲食店営業

「深夜酒類提供飲食店営業」は、風営法2条11項により定義されています。
深夜(午前0時~午前6時)において、設備を設けて客に酒類を提供して営む飲食店営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く)のことであり、バーや酒場がこれに当たります。

(5)その他の風営法違反になる行為と罰則

風営法違反となる行為や罰則は、実際の事案では上述した許可制や届出制に対する罰則が中心となりますが、その他にも細々とした違反行為と罰則があります。
その全てをこのページで網羅することはできませんが、主なものを刑罰が重い順番に整理すると次のようになります。

【1】名義貸し
風俗営業においては名義貸しが禁止されており、実質的な経営者が第三者に許可を取得させて営業を行わせた場合、名義を貸した側は2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金となります(風営法49条3号)。

【2】店舗型性風俗特殊営業に関する罰則
営業禁止区域において店舗型性風俗特殊営業を行うことは2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金となります(風営法49条5号)。
店舗型性風俗特殊営業を営む者が客引きや18歳未満の者を接客に従事させること、18歳未満の者に客として店舗に立ち入らせることは、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金となります(風営法50条1項4号)。

【3】風俗営業における年齢に関する規制
また、風俗営業を営む者が、18歳未満の者に客の接待をさせること、23時から翌日6時までの時間帯に18歳未満の者を客に接する業務に従事させること、18歳未満の者を客として立ち入らせること、20歳未満の者に酒又はたばこを提供することは、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金となります(風営法50条1項4号)。

【4】客引き等
風俗営業を営む者が客引きを行うことや、客引きのための立ちふさがり又はつきまといを行うことについては6か月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金となります(風営法52条1号)。

【5】その他の罰則
広告制限区域に広告物を設けること、従業者の身分確認義務違反、従業員名簿の作成保存義務違反等について、100万円以下の罰金となります(風営法53条2号、同条4号、同条5号)。
許可申請書や構造変更届出書における虚偽記載、遊技玉等の営業所外への持ち出し行為、営業所における管理者設置義務違反等について、50万円以下の罰金となります(風営法54条1号、同条2号、同条4号、同条5号)。
風俗営業許可証の掲示義務違反、経営者の相続人による許可証の書換え義務違反、営業所の構造変更届出義務違反等について、30万円以下の罰金となります(風営法55条1号、同条2号、同条3号)。

(6)両罰規定による法人に対する刑事罰

これらの刑事罰の対象になる行為について、法人も処罰の対象となって罰金刑を受けることになります(風営法56条)。
行為者と法人の両方が罰則を受けるという意味において、これを両罰規定といいます。

3 風営法違反に対する行政処分

風営法違反に対する行政処分には、指示処分、営業停止処分、営業許可取消処分があります。
風営法違反に対する行政処分を行うのは、都道府県の公安委員会となります。
公安委員会は、行政処分の要件を満たすかどうかを判断します。

この風営法上の要件は、法令違反等の事実に加え「善良の風俗若しくは正常な風俗環境を害し、または少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認められるとき」といったように、非常に抽象的であり、公安委員会の裁量が広く認められています。
単に法令違反の事実だけでなく、公安委員会は、違反内容、過去の違反歴、処分が同種の業者に与える影響といった諸般の事情を総合的に考慮し、処分をするかどうかを決めることになります。
このような考慮を行い、指示処分、営業停止処分、営業許可取消処分の順番で処分が重くなるため、どのような処分を行うことが適切かどうか判断することになります。

なお、各処分の要件についてはおおむね共通するところですが、細かい点で違いがあります。
実際に処分を受けた場合あるいは受けることになる場合において、行政処分の適法性が刑事処分に直結する等、刑事処分と同様に重大な不利益となり得ますので、行政処分に疑問のある方は弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
さらに、許可取消処分においては独自の要件が規定されています。

(1)指示処分

いきなり営業停止処分や許可の取消処分を行うことは処分を受ける側の不利益が大きいため、まずは風営法の規定の要件が満たされる場合、よほど重大かつ深刻な違反がある場合は別として、公安委員会は指示処分を検討することになるのが一般的な流れとなります。
違反行為の自主的な是正を求める処分で、これに違反した場合であっても刑事罰の対象とはなりません。

(2)営業の停止処分

営業の停止処分とは、一定期間を定めて営業が禁止される行政処分です。
指示処分とは異なり、営業の停止処分に違反した場合には、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金という刑事罰の対象となります(風営法49条4号)。

(3)許可の取消処分

風俗営業について許可を受けた者が、不正の手段によってその許可を受けたものとされる場合には、許可取消の処分を受けることになります。
所在不明の期間が一定の期間を経過し、あるいは許可を受けてから一定の期間営業を開始しない場合にも取消処分の対象となります。
取消処分となった場合、対象なる営業を行うことができなくなります。
取消処分に反して営業を行った場合、無許可で営業を行ったことになりますので、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金という刑事罰の対象となります(風営法49条1号)。

4 風営法違反事件の刑事手続の流れ

風営法違反事件が捜査機関に認知されるきっかけは、様々なものがあります。
出入りしている客からの情報提供や、捜査員が客として潜入捜査することもあります。

風営法違反事件の捜査が行われる場合、逮捕・勾留されることがあります。
逮捕・勾留は、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合に、一定期間身柄を拘束する強制処分ですが、逮捕後、最長で23日間拘束されることになります。
それまでに、検察官が起訴するかどうかを判断することになります。

起訴された場合には、裁判所において有罪・無罪の判断、有罪の場合には量刑の判断がされることになります。

一般的に、風営法違反事件では、従業員や客として出入りしていた者、名義貸しの場合には名義を貸した者と借り受けた者といったように、関係者が複数に及ぶため、捜査は複雑なものとなります。
このような複雑な捜査事情に加え、関係者に働きかけて有利な供述を作出する恐れがある等として、証拠隠滅や逃亡のおそれが容易に認められ、逮捕・勾留の上で捜査が進められることが多く見られます。

5 風営法違反事件の刑事弁護のポイント

事実関係を認めるか、事実関係を争うかによって弁護活動の方針が異なります。

事実関係を認める場合には、より有利な刑事処分を獲得するために弁護活動を行っていくことになります。
起訴前の場合には、不起訴処分の獲得を目指して活動していくことになります。
事実関係を認めて反省していることや、風営法の規制対象となる営業には今後従事しないと誓約すること、監督体制が出来ていること等を捜査機関に伝え、有利な情状を明らかにします。
起訴された場合には、執行猶予判決の獲得を目指して活動していくことになり、事実関係を認め不起訴処分を求める活動と概ね共通します。

一方で、事実関係を争う場合には、弁護士が本人との打ち合わせを重ね、争うべき点を明確化していきます。
本人が身柄拘束されている場合には、弁護士が頻繁に接見を行い、打ち合わせを行っていきます。
風営法違反の事案は、事案の内容として関係者が複数おり、事実関係としても複雑となる傾向があります。
また、適用される条文の面においても、解説いたしましたように、風営法は複雑かつ多様な内容となっており、まず自分のどのような行為がどの条文によって違反と疑われているのかを正確に特定する必要があります。
そこで、弁護士はまずは条文を確認し、本人から十分に事情聴取を行った上、条文の適用関係がどのようになっているのかを調査することから弁護活動を始めることになります。

風営法違反の刑事弁護においては、一般的な刑事手続きの流れについて精通する必要があることはもちろんのこと、それに加え、風営法そのものの知識、さらに許可や届け出という行政法上の概念に関する知識が必要となりますので、刑事弁護の中でもより専門的な部類に含まれるといえます。
このように複雑な事実関係と条文の適用関係、より専門的な対応が必要とされる中、風営法違反の争点は様々ですが、一番分かりやすいパターンは、18歳未満の者に対し酒を提供したことが疑われている場合において、18歳未満であることを知らなかったと主張することが考えられます。
法律的には故意(ある事実を認識し認容していなかったこと)を争うものですが、18歳未満であると気づけなかった理由を積極的に明らかにしていくことになります。
具体的には、酒を提供した相手の服装や髪型、背格好、言動等から、18歳未満であると認識できなかったと主張していくのが基本的な方針となります。
あくまで分かりやすい一例として挙げましたが、どの条文の適用によって犯罪と疑われているのかを特定し、そこで18歳未満の認識が争点になるということが判明すれば、後は故意の問題という一般的な刑事事件の知識や経験を生かした弁護活動を行う、そのような判断過程となります。

6 弁護士にご相談ください

このように、風営法違反の刑事弁護では、複雑な風営法の条文を正確に読み解き、時宜に応じた適切な弁護活動を行う必要がありますが、そのためには専門的な知識と経験が不可欠です。風営法違反でお困りの方は、当事務所の弁護士までご相談ください。

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