不同意性交等罪(旧強姦罪)について

不同意性交等罪は、以下の行為や状況下で、同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが困難な状態にさせ(あるいはその状態に乗じて)、性交等をした場合に成立する犯罪です。

・暴行もしくは強迫を用いること、または、それらを受けたこと
・心身の障害を生じさせること、または、それがあること
・アルコールもしくは薬物を摂取させること、または、それらの影響があること
・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、または、その状態にあること
・同意しない意思を形成したり、表明したり、あるいは、これらを全うするいとまがないこと
・予想とは異なる事態に直面させて恐怖させもしくは驚愕させること、または、その事態に直面して恐怖しもしくは驚愕していること
・虐待に起因する心理的反応を生じさせること、または、それにあること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、または、それを憂慮していること
 
なお、不同意性交等罪における性交等というのは、性交、肛門性交、口腔性交、膣や肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為でわいせつなものをした場合を指します。

また、被害者が16歳未満の場合には、性交等をすることに被害者が同意をしていたとしても成立します(ただし、同世代間での自由な意思決定に基づく性的行為については処罰の対象外にするため、13歳以上16歳未満の者との性交等の場合は、行為者が5歳以上年上の場合のみ、処罰の対象とされています)。

これまで強制性交等罪として規定されていたのと比べ、犯罪行為が類型化され分かりやすくなった一方で、性交等の範囲が広くなり、被害者の年齢も引き上げられるなど、厳罰化が進みました。

不同意性交等罪の法定刑(法律で規定された刑)は5年以上20年以下の懲役です(刑法177条)。
性犯罪の中では、最も重い犯罪類型です。

不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)・痴漢について

不同意わいせつ罪は、上記の不同意性交等罪に掲げる行為や状況下で、同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが困難な状態にさせ(あるいはその状態に乗じて)、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
なお、被害者が16歳未満の場合には、わいせつな行為をすることに被害者が同意をしていたとしても成立することや、同世代間の自由な意思決定に基づくわいせつ行為が一部処罰の対象外とされている点は不同意性交等罪と同様です。
つまり、不同意性交等罪との違いは、性交等の行為なのか、わいせつな行為にとどまるのかという点です。

また、痴漢行為をした場合でも、行った内容によっては、不同意わいせつ罪が成立することがあります。
具体的な行為にもよりますが、一般的には、下着の中に手を入れた場合には不同意わいせつ罪が成立し、服の上から触る行為の場合には迷惑防止条例違反となります。

不同意わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役です(刑法176条)。
これに対して、迷惑防止条例違反の法定刑は各自治体によって異なりますが、おおむね6月以下の懲役と定められています。

性的姿態撮影等処罰法違反・盗撮について

従来、盗撮は都道府県が制定する迷惑防止条例などによって処罰されてきましたが、新たに性的姿態撮影等処罰法が制定されたことにより、全国一律の基準で盗撮が処罰されることになりました。

性的姿態撮影等処罰法違反となる行為は、以下のとおりです。

・性的姿態等(※)をひそかに撮影する行為(盗撮)
・不同意性交等罪で規定されている不同意の状況下で撮影する行為
・行為の性質が性的なものではないと誤信させたり、特定の者以外の者が閲覧しないと誤信させて撮影する行為
・16歳未満の者を対象として性的姿態等を撮影する行為(ただし、13歳以上16歳未満の者との性交等の場合は、行為者が5歳以上年上の場合のみ、処罰の対象)。

※性的姿態等というのは、性的な部位(性器、肛門、これらの周辺部、臀部、胸部)、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接もしくは間接に覆っている部分、または、わいせつな行為もしくは性交等が行われている間における人の姿態、を指します。

もちろん、医療行為としての撮影や、相撲など上半身裸となるイベントの様子を撮影する場合など、正当な理由がある場合は処罰の対象外となっていますが、このような正当な理由がある場合というのは非常に限られています。

性的姿態を撮影した場合の法定刑は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています。
なお、性的姿態等を撮影する目的でデパートや電車などのように不特定多数の人が出入りできる公共の場所で盗撮した場合には、別途、建造物侵入罪も成立します。

また、性的姿態等を撮影したデータなどを第三者に提供したりインターネット上にアップロードしたり、あるいは、これらの行為をする目的で保管した場合にも性的姿態等の提供罪、保管罪などの犯罪に該当します。

公然わいせつ罪について

公然わいせつ罪とは、不特定または多数の人が認識できる状態でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
わいせつな行為とは、全裸になるなどの性器の露出を伴う行為を指します。
また、わいせつな行為をした際に、実際にこれを見ている人がいなかったとしても、道路上や公園など不特定または多数の人がわいせつな行為を認識できる状況下でなされたのであれば、公然わいせつ罪が成立します。

公然わいせつ罪の法定刑は6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料と、幅広く定められています(刑法174条)。

弁護活動について

性行為やわいせつな行為をしていない場合、あるいは、被害者が16歳以上でこれを行うことについて被害者の同意があったという場合には、そもそも犯罪が成立しないため、不起訴あるいは無罪を目指すことになります。

他方で、犯罪が成立する場合であっても、示談が成立している場合には、不起訴となる可能性が高くなるので、早期の示談の成立を目指します。
起訴されて裁判になったとしても、示談が成立している場合には、保釈請求が認められる可能性や執行猶予判決となる可能性も高くなります。
しかし、わいせつ・性犯罪の被害者は、加害者やその家族とは会ってくれないことがほとんどです。
そのため、被害者の方と示談を行うためには、弁護士を通じて行うことが必要不可欠となります。
弁護士であれば、第三者としての立場にあるので、被害者が弁護士を信頼し示談に応じる可能性が高まりますし、示談交渉の専門家として、それぞれの事件に即した解決をすることが期待できます。

また、示談が成立しない場合であっても、贖罪寄付(慈善団体などへ寄付)をするとか、再発防止のクリニックへの通院や家族の監督等の再犯防止の意思をしっかりと裁判官へ伝えていくなどの対応をすることになります。

刑事弁護を受けた弁護士は、以上を踏まえて、お客様のために最適な弁護方針を検討し、サポートさせていただくこととなります。

弁護士にご相談ください

わいせつ・性犯罪では、被害者との示談交渉など、迅速な対応が必要となることが多いです。
そのため、一刻も早く弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
また、早期に弁護士にご依頼されて、被害者との示談交渉を含む弁護活動を一任することで、有利な結果を得られる可能性が高まります。
わいせつ・性犯罪の刑事弁護についてお困りの方がいらっしゃいましたら、お早めに当事務所にご相談ください。

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