1.保釈とは
保釈とは、起訴後の被告人について、保釈保証金の納付などの一定の条件のもとに勾留の執行を停止し、身柄の拘束から解放する手続です。
2.保釈の請求
保釈されるためには、裁判所に対し、保釈の請求を行います。
具体的には、保釈請求書を作成し、身元引受書などの書類を添付して、裁判所に提出します。
保釈の請求は、起訴前には認められておらず、起訴後に請求できるようになります。
3.保釈の要件
保釈には、主に、権利保釈と裁量保釈の2つがあります。
裁判官が保釈を認めるための要件は、以下のとおりです。
(1)権利保釈
権利保釈とは、法律上の除外事由がなければ保釈を認めなければならないというものです。
法律上の除外事由は、次のとおりです。
・被告人が死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪を犯したものであるとき
・被告人が前に死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁固にあたる罪につき有罪となったことがあるとき
・被告人が常習として長期3年以上の懲役または禁固にあたる罪を犯したものであるとき
・被告人が証拠隠滅をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
・被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者(証人など)もしくはその親族の身体もしくは財産に害を加えまたはこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
・被告人の氏名または住居が分からないとき
上記のいずれにも該当しなければ、保釈が認められます。
もっとも、証拠隠滅については、その疑いが全くないとは言い切れないことも多いため、権利保釈と同時に後述する裁量保釈を求めていくのが通常です。
(2)裁量保釈
権利保釈が認められない場合であっても、裁判所は、逃亡・証拠隠滅のおそれの程度、身体拘束の継続による健康上・経済上・社会生活上・裁判における防御上の不利益の程度などの事情を考慮し、相当と認める場合には保釈を許すことができます。
保釈を求める際には、次のような事情を指摘するとよいでしょう。
・相応の社会的地位があり、逃亡するおそれがないこと
・証拠隠滅のための現実的な手段が存在しないこと
・身柄拘束により仕事・健康などに不利益が生じていること
また、保釈が認められるためには、逃亡・証拠隠滅などをしないように被告人を監督する身元引受人が必要とされます。
身元引受人には、同居の親族がなることが多いですが、同居していない親族・職場の上司なども身元引受人となり得る場合があります。
4.保釈保証金
裁判所が保釈を許可する場合には、裁判所が定める金額の保釈保証金を裁判所に納付することが条件とされます。
身柄が解放されるのは、保釈保証金が納付されてからです。
保釈保証金の額は事件により異なりますが、150万円~300万円程度が相場とされています。
軽微な犯罪の場合などには、100万円程度とされることがあります。
一方で、被告人が資産家である場合などには、数千万円あるいは数億円とされることもあります。
納付した保釈保証金は、被告人が逃亡などしなければ、裁判の終了時に返還されます。
5.保釈が認められなかった場合の対応
保釈は、請求すれば必ず認められるというわけではなく、被告人が罪を争っている場合や、余罪があって追起訴が予定されている場合などには、認められないこともよくあります。
もっとも、保釈は、一度請求して認められなかった場合でも、繰り返し請求する事が可能です。
状況の変化などがあれば、再度の保釈請求を試みてもよいでしょう。
また、保釈を認めない決定が誤りであるとして、裁判所に対し、準抗告・抗告(不服申立て)をすることもできます。
6.弁護士にご相談ください
保釈を認めてもらうためには、保釈の要件を満たすことを適切に主張していく必要があります。
そして、専門家である弁護士は、専門的な知識・経験に基づき、事件の内容に即した的確な保釈請求を行うことが可能です。
保釈についてお困りのことがありましたら、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。