1 事案の概要

依頼者は、ご相談の1年以上前に、警察から家宅捜索を受け、その際に、ご自身の携帯電話と配偶者の携帯電話を差し押さえられました。
依頼者及び依頼者の配偶者は、電話番号を変更したくなかったため、差し押さえされた後も基本料金を支払い続けていました。

そして、家宅捜索から約1年3か月後に逮捕されたものの、勾留されなかったため、在宅事件として刑事弁護のご相談・ご依頼をお受けしました。

2 当事務所の活動

刑事訴訟法では、捜査機関に対し、「押収物で留置の必要がないもの」は、「事件の終結を待たないで」「還付しなければならない」と定めています(123条1項、222条1項)。
そこで、当事務所の弁護士は、検察官に対し、押収物還付請求書を提出し、その中で、「捜査に必要な合理的期間は経過している」と主張しました。
具体的には、差押えから1年以上経過しているため、通話記録の解析等の必要な捜査は終了し、その結果がすでに証拠化されていると想定されること等の事実を指摘しました。
加えて、依頼者や依頼者の配偶者が、携帯電話を使用できないのにもかかわらず、基本料金を支払い続けており、経済的損失が大きいことも主張しました。

3 当事務所が関与した結果

請求を受けた検察官は、押収物の還付にすんなりと応じ、無事、依頼者と依頼者の配偶者のもとへ携帯電話が返還されました。

被疑事件に対する対応としては、直接の被害者が存在しない犯罪類型であったことから、贖罪寄付を行いました。
その後、検察官から略式起訴され、裁判官から略式命令(罰金)が出されたことにより、迅速かつ簡易に終結しました。

4 解決のポイント(所感)

刑事訴訟法では、「留置の必要」の判断基準については、示されておりません。
捜査機関は、「留置の必要」を漠然ととらえ、念のために還付しないという判断がされることもあります。
そのような内部判断がされた場合には、一度押収された物は、事件終結までの間、還付されず、捜査機関のもとにとどまることになります。

この問題を解決するためには、刑事事件に精通した弁護士に捜査機関との交渉を依頼し、弁護士が専門的な知見から捜査機関を説得することが重要となります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、捜査の状況等を適切に見極め、証拠品の「留置の必要」について的確な主張をすることが可能です。

押収物還付請求をはじめ、刑事事件でお困りの方は、刑事弁護を得意とする当事務所の弁護士にご相談ください。

解決事例の一部をご紹介させて頂きます

No 解決事例
1 傷害事件で逮捕・勾留されていたところ、示談契約の成立による被害届の取下げを受け、ご依頼から4日後に勾留決定の取消しによる釈放(その後、ほどなく不起訴処分)を得た事案
2 30代の男性が、性的姿態撮影等処罰法に違反する盗撮行為をした事件において、被害者との示談を成立させ、被害届が取り下げられた結果、不起訴処分を獲得した事案
3 不同意わいせつ事件において、被害者との示談が成立しなかったものの、弁済供託をすることで、不起訴処分を獲得した事例
4 1年以上前から差し押さえられていた携帯電話につき、押収物還付請求をし、返還を受けた事例