1.公務員の刑事事件に特有の問題
公務員の刑事事件では、実名報道、欠格事由、懲戒処分という特有のリスクが存在します。
具体的にはどのようなものなのか、以下でご説明いたします。
2.実名報道されてしまうのか?
実名報道は、捜査機関が報道機関に対して事件内容および実名を公表し、報道機関が実名報道すると判断することによって行われます。
青森県のような地方都市においては、一般人の刑事事件の場合は、たとえ軽微な事件であっても、逮捕されれば公表・実名報道される傾向にあります。
そして、重大事件や社会的関心が高い事件であれば、ほぼ確実に公表・実名報道されています。
公務員の刑事事件の場合は、公務員が公共的立場にあることや、社会的な関心が高いことを理由に、逮捕時には、事件の軽重にかかわらず、ほぼ確実に公表・実名報道されているのが現状です。
実名報道は、新聞だけでなく、テレビ局・新聞社が管理・運営するネットニュースや、地方局でのテレビニュースにおいても行われる可能性があります。
3.欠格事由とは?
公務員の欠格事由とは、公務員としての資格を失う事由をいいます。
欠格事由の具体例として、「禁錮以上の刑に処せられ」ることが挙げられます。
すなわち、公務員が「禁錮以上の刑に処せられ」た場合は、原則として失職することになります。
禁錮以上の刑とは、死刑、懲役、禁錮のことをいい、ここには、執行猶予付き判決も含まれます。
一方で、罰金・科料(財産刑)、拘留(30日未満の自由刑)の場合には、欠格事由には該当しません。
また、逮捕・勾留、起訴されたことだけでは、欠格事由には該当しませんので、逮捕・勾留、起訴の事実のみをもって、失職することはありません。
ここで、注意を要するのが、起訴休職の制度です。
公務員が起訴されると、休職させられる場合があります。
すなわち、起訴されると、事件が裁判所に係属する間は起訴休職により休職に追い込まれ、その後禁錮以上の刑が確定すれば欠格事由に該当するため、失職することになる、という場合もあります。
4.懲戒処分とは?
公務員は、「全体の奉仕者」として位置づけられています。
そのため、「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合」には、懲戒処分を受ける可能性があります。
懲戒処分には、①免職、②停職、③減給、④戒告の4種類があります。
①免職:職員の公務員としての身分を剥奪するもの。
②停職:一定期間、職員の公務員としての身分を保有させたまま、職務に従事させないもの。その間の給与は不支給。
③減給:一定期間、給料を一定額減じて支給するもの。
④戒告:非違行為の責任を確認し、将来を戒めるもの。
おおむね刑事処分に比例した内容の懲戒処分がされることが多いですが、最終的には、非違行為の動機、態様、結果等を考慮して、判断されます。
5.当事務所ができる弁護活動
(1)実名報道について
実名報道を防ぐためには、捜査機関に対し公表しないように、報道機関に対し実名報道をしないように、求めることが可能です。
とはいえ、公表・実名報道するか否かの最終的な判断は、各機関に委ねられているため、完全に防ぐことはできません。
一般的に、公表や実名報道は、逮捕時、送検時、起訴時、第1回公判時、判決言渡し時にされることが多いです。
そのため、逮捕・送検・起訴自体を防ぐことで、公表・実名報道される機会・回数を減らすことが考えられます。
そして、青森県内では、公務員が逮捕された場合に、ほぼ確実に公表・実名報道されている実情からすれば、逮捕を防ぐことが特に重要であるといえます。
当事務所では、逮捕等を防ぐために、捜査機関に対して意見書を提出したり、被害者との間で早期に示談を成立させるための活動をしたりすることができます。
(2)欠格事由・懲戒処分について
逮捕を防ぐことは、欠格事由への該当や懲戒処分を避けるためにも重要です。
一方で、仮に逮捕されてしまった場合には、早期の示談交渉や被害弁償を行うことで、不起訴処分を目指すことになります。
不起訴処分が得られると、起訴休職がされないほか、裁判自体が行われないため、欠格事由の要件である「禁錮以上の刑に処される」こともなくなります。
懲戒処分の内容は、おおむね刑事処分に比例してされることから、不起訴処分を獲得できれば、比較的軽い懲戒処分を望めることになります。
当事務所では、被害者との間に入って早期の示談交渉や被害弁償を行ったり、検察官に対して不起訴処分を求める意見を述べたりすることが可能です。
6.弁護士にご相談ください
刑事事件においては、迅速な対応が求められます。
しかし、逮捕後すぐに面会できるのは、弁護士だけであり、家族・親友は面会することができません。
そのため、いち早く弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
特に公務員の方は、実名報道、欠格事由、懲戒処分という特有のリスクがあるため、早期の対応が必要となります。
公務員の刑事事件・刑事弁護についてお悩みの方は、当事務所にご相談ください。
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